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【出雲國だより第1回】未来へ受け継がれる神聖な森。「出雲大社遷宮の杜」に息づく祈りの営み

神々の聖地・出雲国に受け継がれる文化や食、そして人々の営みをひもとく「奥出雲NAORAI」の連載シリーズ。 第1回は、出雲大社と田部家の深い結びつきを象徴する「出雲大社遷宮の杜」を訪ねます。未来へと祈りの営みを受け継ぐ、神聖な森の物語をお届けします。

豊かな森に囲まれた出雲大社

「日本には、神国という尊称がある。そんな神々の国の中でも、一番神聖な地とされるのが、出雲国である。この国を生み、神々や人間の始祖でもある伊邪那岐命と伊邪那美命が、青い空なる高天原より初めており立たれ、しばらくお留まりになったのが出雲の地なのである」
『新編 日本の面影』ラフカディオ・ハーン著(角川ソフィア文庫)

紀行文作家であり、日本研究家でもあるラフカディオ・ハーン(小泉八雲)は、著書『日本の面影』のなかで、「奥出雲NAORAI」の故郷である出雲の地について、このように記しました。

数々の神話が息づくギリシャに生まれ、後に渡ったアメリカの地で、ハーンはイギリスの日本学者バジル・ホール・チェンバレンによって英訳された、日本最古の歴史書『古事記』に巡り合います。そこに描かれた深遠なる世界に魅せられたハーンは、日本の神話の舞台である出雲に、古代から変わらぬ精神が息づいていることを直感したのでしょう。その強い憧憬がハーンを日本へと導き、出雲に広がる神話の風景を訪ね歩かせたのです。

西洋人で初めて出雲大社の昇殿を許された人物としても知られるハーン。出雲大社を初めて訪れた際の印象を、次のように語っています。

「昨晩も通った青銅の大鳥居を再びくぐりながら、こうして白日の下に初めて見ても、社殿までの参道の素晴らしさは、いっこうに損なわれないことに改めて驚いた。粛々とした大樹の並木には、思わずため息が出てくる。なんとも壮大な眺めだ。左右に広々と広がる森と敷地は、想像以上に印象的であった」
『新編 日本の面影』ラフカディオ・ハーン著(角川ソフィア文庫)

出雲大社ご遷宮に向けて育まれる豊かな森「出雲大社遷宮の杜」

神々が宿る森、悠久の祈り

ハーンの心に深く響いたのは、出雲大社の荘厳さと、それを包み込む森の静謐な佇まいでした。

古来、出雲大社と周囲の森は分かち難く結びついてきました。この地は長きにわたり良質な木材の宝庫であり、神々の社を建てるための恵みを供給する、特別な聖地であったのです。

出雲の森と出雲大社の深いつながりが最も鮮明に現れるのが、「御遷宮(ごせんぐう)」です。御神体や御神座を一時的にお遷しし、本殿の修造や大屋根の葺き替えを行うこの神事は、木造建築の美しさを保ち、伝統技術を未来へ継承するため、60年という時の周期で執り行われています。

60年に一度行われる出雲大社御遷宮に使われる檜皮

平成20年より執り行われた「出雲大社 平成の大遷宮」。この際、屋根の葺き替えに使用された檜皮(樹齢70年以上のヒノキの立ち木から樹皮を剥ぎ、美しく成型したもの)は全国から集められたものの、島根県内産のものはほとんどありませんでした。

雲南市の石飛市長、出雲市の飯塚市長の立会いの下執り行われた、「出雲大社遷宮の杜」の調印式

「平成の大遷宮の際、出雲大社の檜皮が他県から持ってきたものだと知って、出雲の人間として、非常に恥ずかしく思いました。我々が所有する山に多くのヒノキがあるのにもかかわらず、地元の象徴である出雲大社の大事業に何も協力できなかったのです。そこで、次の遷宮に向けて田部家の山から檜皮を80%、その次以降は100%を永久に無償提供することを決めました」

1460年から続く田部家の第25代当主・田部長右衛門(田部グループ代表)はこのように語ります。 田部家は長きにわたり、たたら製鉄の伝統を継承してきました。鉄を生み出すために不可欠な木炭と砂鉄。それらを賄うべく広大な山林を所有し、森を育ててきた田部家だからこそ、御遷宮という国家規模の神事に、途方もない数のヒノキの提供が可能となるのです。

「出雲大社遷宮の杜」の調印式の様子

「遷宮に使用される材は、できる限り県内で担うべきである」という強い意志のもと、田部は自らが所有する豊かな山林のなかに、将来の御遷宮に用いる檜皮を育む「出雲大社遷宮の杜」を設営しました。そこで採取された檜皮を奉納し、60年毎に繰り返される祈りの営みに役立ててもらうという大いなる決断だったのです。

将来の御遷宮に用いる檜皮を育む「出雲大社遷宮の杜」

子々孫々につなぐ、出雲の誉

「出雲大社は、日本の歴史と文化を象徴する存在です。その遷宮に関わることは、大変光栄なこと。出雲のシンボルである出雲大社の本殿が、すべて我々の山の材で葺かれ、それを永久に心に留めて生活できる。お屋根を支えさせていただける誉(ほまれ)は、誰もが与えられるものではありません。伝統と信仰を尊重し、持続可能な森林資源の活用を通じてこれまでの歴史に感謝しながら、子々孫々までこの誉を伝えていくことが大切です。また、山や樹木の保全は、遷宮の杜の維持と活用の両面から、長い年月を要する取り組みになると考えています。私たちが育ててきた山が地域のために役に立つ、これ以上の幸せはないと感じています」

檜皮葺きの屋根は、古来、宮殿や神社仏閣など格式の高い建物に用いられてきた日本独自の伝統的な技法です。そこには、自然と共生してきた先人たちの深い知恵が息づいています。樹木の形成層を傷つけることなく樹皮を剥ぐことで、木は枯れることなく再び新たな樹皮を生み出し、約10年の歳月を経て再び採取することが可能になります。

100年、200年という壮大な時間軸のなかで守り育てられる「出雲大社遷宮の杜」

通常、人工林のヒノキは60年も経過すれば建築用材として伐採期を迎えます。しかし、「出雲大社遷宮の杜」に定められたヒノキの山は、持続可能な技術とともに、これから100年、200年という壮大な時間軸のなかで守り育てられていきます。

森が生き続けることで、人の手によって「技」と「想い」が子々孫々へと手渡されていく。豊かな山を育む営みは、大切な文化と祈りを、確かな手触りとともに未来へ届けることでもあるのです。

奥出雲NAORAI」が皆様にお届けする品々にもまた、この出雲の地で受け継がれてきた悠久の時間と、祈りの精神が宿っています。

出雲の地で受け継がれてきた悠久の時間と、祈りの精神が宿る贈り物ブランド「奥出雲NAORAI」

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